金属屋根の修理には、DIYで対応可能な軽微な補修と、プロに依頼すべき本格的な修理があります。DIYで対応できるのは、表面のサビの初期段階での補修や、ビスの増し締め・交換、継ぎ目や役物のコーキングの更新、直径5mm以下のピンホールの補修など、比較的簡単な作業に限られます。一方で、野地板の腐朽やルーフィングの破断、広範囲にわたるサビや穴、谷樋や立ち上がり、棟部分の漏水、折板ボルトの腐食、高所や急勾配での作業などは、専門的な知識と技術が必要なため、プロに依頼するべきです。
最適な修理方法を選ぶためには、屋根の下地が健全であればカバー工法を採用することで短期間での施工が可能であり、断熱性能も向上します。しかし、下地が劣化している場合や再発のリスクが高い場合は、葺き替えを行うことで屋根の寿命をリセットすることができます。修理の品質を確保するためには、原因の一次特定を行い、ドローンや散水調査を活用して問題箇所を明確にし、写真台帳を作成して部位ごとの数量や単価を明示した見積もりを取得することが重要です。施工後の検収まで一貫して管理することで、確実な修理が実現します。
- 1. 金属屋根の基礎知識(材質・構法・弱点)
- 2. 劣化診断チェックリスト(屋外・屋内・屋根裏)
- 3. 安全と施工条件(DIYの前に)
- 4. DIYでできる軽微修理(安全範囲と手順)
- 5. DIY不可の判断基準(プロ依頼ライン)
- 6. プロが行う本格修理(工程と品質基準)
- 7. 役物(雨仕舞)の要所別ガイド
- 8. コスト/工期の実勢目安(戸建30坪想定・税別)
- 9. 立地・気候別の設計留意点
- 10. 写真台帳の作り方(保険・査定が通る記録)
- 11. 施工後の検収チェックリスト(抜粋20項目)
- 12. メンテナンス計画(寿命を倍にする運用)
- 13. よくある質問(FAQ)
- 14. 火災保険・補助金の活用
- 15. 失敗しない業者選定の基準(RFP化できる要件)
- 16. まとめ|“原因→設計→検収”で、再発しない金属屋根へ
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1. 金属屋根の基礎知識(材質・構法・弱点)
金属屋根は、その材質や構法によって特徴や耐久性が異なります。以下に代表的な材質と構法、そして金属屋根の弱点について詳しく解説します。
材質の種類と特徴
- トタン(亜鉛めっき鋼板)
トタンは軽量で安価なため、古くから広く使用されてきました。しかし、サビが発生しやすいという欠点があります。 - ガルバリウム鋼板(GL)
耐食性に優れたガルバリウム鋼板は、現在の金属屋根の主流となっています。コストパフォーマンスが高く、長期間の使用に適しています。 - ステンレス/アルミ
ステンレスは高い耐久性を持ち、アルミは軽量であるため、特定の用途で選ばれることが多いです。 - 銅
高級感があり、緑青が形成されることで独特の風合いを持つ銅は、耐久性も高いですが、異種金属との接触による腐食に注意が必要です。
代表的な構法
金属屋根の施工方法には、以下のような種類があります。
- 横葺き
- 立平葺き(瓦棒を含む)
- 折板(主に工場や倉庫で使用)
- 役物(棟、ケラバ、谷、軒先、雪止めなど)
金属屋根の弱点
金属屋根には以下のような弱点があります。
- サビ(赤錆・白錆)
特にトタンやガルバリウム鋼板では、表面の塗膜が劣化するとサビが発生しやすくなります。 - 固定部の緩み(釘・ビス)
長期間の使用により、固定部が緩むことで漏水の原因となります。 - 継ぎ目や役物の止水劣化
継ぎ目や役物部分のコーキングが劣化すると、雨水が侵入しやすくなります。 - 塗膜の劣化
紫外線や風雨の影響で塗膜が劣化し、屋根材の保護機能が低下します。
2. 劣化診断チェックリスト(屋外・屋内・屋根裏)
金属屋根の劣化を早期に発見するためには、定期的な点検が欠かせません。以下に、屋外、屋内、屋根裏で確認すべきポイントをまとめました。
屋外でのチェックポイント
- 屋根材の変色や白錆、赤錆の発生
- 塗膜のチョーキング現象(粉状の物質が表面に現れる)
- 板金の浮きや波打ち
- ビス頭の錆や座金パッキンの硬化
- 継ぎ目の割れや隙間
- 棟包みの浮き
- 谷部の汚れや雨樋の変形・詰まり
屋内・屋根裏でのチェックポイント
- 天井の輪染みやクロスの浮き
- カビ臭の発生
- 屋根裏の湿った下地や黒ずみ
- 光漏れ(ピンホールの兆候)
- 急激な温度変化(断熱欠損のサイン)
プロに依頼すべき兆候
以下のような兆候が見られた場合は、DIYでは対応が難しいため、プロに依頼することを検討してください。
- サビが進行して素地に穴が開いている
- 谷や立ち上がり、棟部分からの漏水
- 折板ボルトの腐食や座金の全滅
- 屋根勾配が急で安全確保が難しい場合
3. 安全と施工条件(DIYの前に)
DIYで金属屋根の補修を行う際には、安全を最優先に考える必要があります。以下の条件を守り、無理のない範囲で作業を行いましょう。
作業を避けるべき条件
- 雨天、強風、夜間の作業は絶対に避ける
- 勾配が急な屋根には登らない
必要な気象条件
- 塗装やコーキング作業は、気温5℃以上、湿度85%未満、結露がない状態で行う
必須の安全装備(PPE)
- ヘルメット
- 滑り止め付きの靴
- 手袋
- 保護メガネ
作業の基本ルール
- 必ず2人以上で作業を行う
- 単独作業や脚立の無理な使用は事故の原因となるため避ける
4. DIYでできる軽微修理(安全範囲と手順)
金属屋根の修理において、DIYで対応可能な軽微な補修作業は、適切な道具と手順を守ることで安全かつ効果的に行うことができます。以下に、具体的な作業内容と手順を詳しく解説します。
4-1 表面サビの初期補修(塗膜再生)
金属屋根の表面に発生したサビは、早期に対処することで進行を防ぎ、屋根材の寿命を延ばすことが可能です。以下の手順で作業を進めましょう。
必要な道具と材料
- ワイヤーブラシまたはサンドペーパー(#80から#240までの粒度を使用)
- 防錆プライマー(錆止め剤)
- 屋根用の上塗り塗料(ウレタン系またはシリコン系)
- ローラーや刷毛
- 脱脂剤
作業手順
- 錆の除去
ワイヤーブラシやサンドペーパーを使用して、浮き上がったサビを完全に除去します。素地が見えるまでしっかりとケレン作業を行い、錆の周囲も広めに処理することで、再発を防ぎます。 - 脱脂作業
脱脂剤を使用して、表面の油分や汚れを取り除きます。この工程を怠ると、塗料の密着性が低下するため注意が必要です。 - 防錆下塗り
防錆プライマーを塗布し、錆の進行を抑制します。均一に薄く塗ることがポイントです。 - 上塗り作業
屋根用の上塗り塗料を2回に分けて塗布します。1回目は薄く塗り、乾燥後に2回目を重ね塗りします。塗膜にムラができないよう、丁寧に作業を進めましょう。
ポイント
- 錆の周囲を広めにケレンし、エッジ部分を面取りして段差をなくすことで、仕上がりが美しくなります。
4-2 ビス・釘の増し締め/交換
屋根材を固定しているビスや釘が緩むと、漏水や屋根材の浮きの原因となります。以下の手順で適切に補修を行いましょう。
必要な道具と材料
- ステンレス製のビス(シールワッシャー付き)
- ドライバー
- タッチアップ用の塗料
作業手順
- 緩みの確認
すべてのビスや釘の緩みを確認します。 - 既存ビスの抜き取り
緩んでいるビスを取り外し、下地の状態を確認します。 - 新規ビスの取り付け
必要に応じて太径のビスを使用し、新しいビスをしっかりと取り付けます。 - タッチアップ
ビス頭にタッチアップ塗料を塗布し、防錆効果を高めます。
ポイント
- 浮いた状態で無理に締め込むと、座屈が発生し漏水の原因となるため注意が必要です。下地が効かない箇所は、ビスの位置を変更することを検討してください。
4-3 継ぎ目・役物のコーキング更新
継ぎ目や役物部分のコーキングが劣化すると、雨水が侵入しやすくなります。以下の手順でコーキングを更新しましょう。
必要な道具と材料
- 変成シリコン(MS)外装用コーキング材
- プライマー
- ヘラ
- マスキングテープ
作業手順
- 旧シールの撤去
劣化したコーキング材を完全に取り除きます。 - 乾燥と脱脂
表面を乾燥させ、脱脂剤で油分を除去します。 - プライマーの塗布
プライマーを塗布し、コーキング材の密着性を高めます。 - コーキングの充填
コーキング材を継ぎ目に充填し、ヘラで押さえて均一に仕上げます。
ポイント
- 被着体の動きを考慮し、三面接着を避けることが理想的です。深すぎる目地にはバックアップ材を使用して調整しましょう。
4-4 ピンホール/小穴(~5mm)応急補修
直径5mm以下の小さな穴やピンホールは、応急的に補修することで一時的に雨漏りを防ぐことができます。
必要な道具と材料
- ブチル系防水パッチ
- プライマー
- 上塗り塗料
作業手順
- 周囲のケレン作業
穴の周囲をケレンし、表面を整えます。 - プライマーの塗布
プライマーを塗布して密着性を高めます。 - 防水パッチの貼り付け
防水パッチを穴の上に貼り付け、縁をしっかりと押さえます。 - 上塗り作業
上塗り塗料を塗布して仕上げます。
注意点
- 下地が腐食している場合、この補修は短期間しか持たないため、プロによる本格的な修理が必要です。
5. DIY不可の判断基準(プロ依頼ライン)
DIYで対応できる範囲を超える修理は、プロに依頼することが安全で確実です。以下のような状況では、専門業者に相談することをお勧めします。
- 穴や膨れが「点」ではなく面で連続している場合
- 雨漏りの原因が目視で特定できない場合
- 谷樋や立ち上がり、棟部分の止水不良が見られる場合
- ルーフィングが破断している、または野地板が腐朽している疑いがある場合
- 折板のボルトが腐食し、座金が劣化している箇所が多数ある場合
- 2階以上の高所や急勾配で安全確保が難しい場合
6. プロが行う本格修理(工程と品質基準)
金属屋根の修理において、プロが行う本格的な修理は、原因の特定から施工、品質管理まで一貫して行われます。これにより、再発を防ぎ、長期的な耐久性を確保することが可能です。以下に、プロが行う修理の工程と品質基準について詳しく解説します。
6-1 原因一次特定(診断)
金属屋根の修理を成功させるためには、まず問題の原因を正確に特定することが重要です。プロは以下の方法を用いて診断を行います。
ドローン点検
ドローンを使用して屋根全体を撮影し、全景から局所的な問題箇所までを詳細に確認します。特に役物(棟、ケラバ、谷など)や排水ラインの状態を重点的にチェックします。
散水調査
散水調査では、実際に水を流して雨漏りの侵入経路を再現します。この調査は写真や動画で記録され、問題箇所を明確に特定するための重要な手段です。
赤外線や含水計による評価
必要に応じて赤外線カメラや含水計を使用し、屋根下地の状態を評価します。これにより、目視では確認できない内部の劣化や湿気の蓄積を把握することができます。
成果物
診断の結果は、写真台帳や原因特定メモとしてまとめられます。これには、事故による損傷と経年劣化の切り分けが含まれ、補修方針の策定に役立ちます。
6-2 部分張り替え(横葺き/立平/折板)
部分的な損傷が見られる場合、該当箇所のみを張り替える部分修理が行われます。この方法は、コストを抑えつつ問題を解決するのに適しています。
工程
- 養生
作業箇所を保護するための養生を行います。 - 既存屋根材の撤去
損傷した屋根材を取り外します。 - 下地補修
下地の状態を確認し、必要に応じて補修を行います。 - ルーフィングの設置
新しい防水シート(ルーフィング)を敷設します。 - 新規板金の成形と取り付け
新しい屋根材を成形し、取り付けます。 - 役物の復旧
棟やケラバなどの役物を復旧します。 - シール作業
継ぎ目や役物部分にコーキングを施します。 - 完了検査
施工後の状態を確認し、問題がないことを確認します。
品質の肝
- 屋根材の重ね代や留め付けピッチは、製品仕様に準拠して施工します。独自の判断で短縮することは避けます。
- ビスは同材系のものを使用し、防水座金付きのものを選びます。また、切粉の清掃を徹底し、錆の発生を防ぎます。
- 役物の端部止水や逃げ寸法を厳守し、漏水を防ぎます。
6-3 カバー工法(金属→金属)
カバー工法は、既存の屋根材の上に新しい屋根材を重ねる方法で、下地が健全で再発歴が軽微な場合に適用されます。
工程
- 既存屋根の洗浄と浮き是正
既存の屋根材を洗浄し、浮いている部分を修正します。 - 通気胴縁の設置
通気層を確保するための胴縁を設置します。 - 高耐久ルーフィングの敷設
新しい防水シートを敷設します。 - 新規金属屋根の取り付け
新しい金属屋根材を取り付けます。 - 役物流れ止めの設置
雨水の流れを制御するための役物を設置します。 - 換気棟の設置
結露を防ぐために換気棟を設置します。
メリット
- 短期間で施工が完了します。
- 断熱性や遮音性が向上します。
- 廃材が少なく、環境に優しい工法です。
禁忌
- 下地が腐朽している場合や、既存屋根の上にさらにカバーを重ねる(二重三重)ことは不可です。
通気の重要性
結露を抑制するために、通気層と換気棟の設置が推奨されます。
6-4 葺き替え(下地から総入替)
下地が劣化している場合や再発漏水が見られる場合、また広範囲にサビが発生している場合には、葺き替えが最適な選択肢となります。
工程
- 既存屋根材の撤去
既存の屋根材をすべて撤去します。 - 野地板の補強
下地の状態を確認し、必要に応じて補強を行います。 - 高耐久ルーフィングの敷設
新しい防水シートを敷設します。 - 新規屋根材の取り付け
新しい屋根材を取り付けます。 - 役物の設置
棟やケラバなどの役物を取り付けます。 - 換気棟の設置
結露を防ぐために換気棟を設置します。 - 検査
施工後の状態を確認し、問題がないことを確認します。
長所
- 屋根の寿命をリセットすることができます。
- 瓦屋根からガルバリウム鋼板に変更することで、軽量化と耐震性の向上が期待できます。
要点
- 開口期間中の防水養生と雨仕舞を最優先で管理します。
7. 役物(雨仕舞)の要所別ガイド
役物は、屋根の防水性能を左右する重要な部分です。以下に、役物ごとの注意点を解説します。
棟
換気棟を採用することで、結露による腐朽を抑制できます。棟包み板が浮いている場合は漏水のリスクが高まるため、早急に対処が必要です。
谷
谷部分は落葉や砂が堆積しやすく、オーバーフローの原因となります。定期的な清掃が最優先です。
立上り
外壁との取り合い部分では、二次防水(捨てシール)が必須です。これにより、雨水の侵入を防ぎます。
ケラバ/軒先
風の負圧による雨水の吸い上げを防ぐため、端部の止水と固定を強化することが重要です。
8. コスト/工期の実勢目安(戸建30坪想定・税別)
金属屋根の修理や改修にかかる費用と工期は、選択する工法や屋根の状態によって大きく異なります。以下に、代表的な修理方法ごとの目安費用と工期を詳しく解説します。
塗装再生(高耐候塗料を使用)
目安費用: 40〜80万円
工期: 3〜6日
備考:
塗装再生は、屋根材の表面を再塗装することで耐久性を向上させる方法です。ケレン作業(錆や汚れの除去)の程度や、屋根材の素地の状態によって費用が変動します。高耐候塗料を使用することで、長期間にわたる保護効果が期待できます。
部分張り替え
目安費用: 15〜50万円
工期: 1〜3日
備考:
損傷が限定的な場合、該当箇所のみを張り替える部分修理が適用されます。修理する枚数や部位によって費用が異なりますが、全体的なコストを抑えつつ問題を解決するのに適した方法です。
カバー工法(ガルバリウム鋼板使用)
目安費用: 80〜150万円
工期: 4〜7日
備考:
既存の屋根材の上に新しい屋根材を重ねるカバー工法は、短期間で施工が完了し、断熱性や遮音性の向上が期待できます。断熱一体型の屋根材を使用する場合は、追加費用が発生することがあります。
葺き替え(ガルバリウム鋼板使用)
目安費用: 120〜250万円
工期: 7〜14日
備考:
既存の屋根材をすべて撤去し、新しい屋根材に交換する葺き替えは、屋根の寿命をリセットする最も包括的な方法です。撤去作業や廃材処理、下地補強が含まれるため、費用は高めですが、長期的な耐久性が確保されます。
足場設置
目安費用: 15〜30万円
工期: –
備考:
足場の設置費用は、建物の高さや立地条件によって変動します。安全な作業環境を確保するために必要な工程です。
注意点:
正確な費用は、修理する部位の面積や数量、使用する材料の単価によって積算されます。「一式」と記載された見積もりは、詳細が不明確な場合があるため注意が必要です。必ず部位ごとの数量や単価が明示された見積もりを依頼しましょう。
9. 立地・気候別の設計留意点
金属屋根の設計や施工においては、建物が立地する環境や気候条件を考慮することが重要です。以下に、特定の条件下での設計上の注意点を解説します。
海沿い地域
海沿いの地域では、飛来する塩分が金属屋根の腐食を促進するため、特に耐久性の高い材料を使用する必要があります。
- 等級の高い塗膜やステンレス系の部材を採用する
- 異種金属の接触による腐食を防ぐため、適切な設計を行う
豪雪地域
豪雪地帯では、積雪や凍結による屋根への負荷が大きくなるため、以下の対策が必要です。
- 雪止めの設計を行い、雪の滑落を防ぐ
- 谷部分を強化し、雪解け水の排水をスムーズにする
- 雨樋を補強し、凍結による破損を防ぐ
強風地域
強風が頻繁に発生する地域では、屋根材が風で飛ばされないようにするための対策が求められます。
- 屋根材の端部をしっかりと固定する
- 重ね代を十分に確保し、吸い上げによる剥離を防ぐ
工場地帯
工場地帯では、粉塵や薬品が屋根材に付着し、劣化を早める可能性があります。
- 定期的な洗浄を行い、汚れを除去する
- 高耐候塗膜を使用し、腐食を防ぐ
10. 写真台帳の作り方(保険・査定が通る記録)
金属屋根の修理や改修を行う際には、写真台帳を作成することで、保険申請や査定の際に有効な証拠資料となります。以下に、写真台帳の構成と作成手順を解説します。
写真台帳の構成
- 表紙
住所、撮影日、天候などの基本情報を記載します。 - 平面図
撮影位置を番号で示した平面図を用意します。 - 写真の順序
全景、中景、近接の順で撮影し、通し番号を付けます。 - 破損の進行方向や水みちの注記
矢印を用いて、破損箇所の進行方向や雨水の流れを明示します。 - 施工後のBefore/After写真
修理前と修理後の写真を同じ画角で撮影し、比較できるようにします。
ポイント:
写真台帳は、修理の過程を記録するだけでなく、保険会社や査定担当者に対して修理の必要性を説明するための重要な資料となります。正確かつ詳細に記録することを心がけましょう。
11. 施工後の検収チェックリスト(抜粋20項目)
金属屋根の修理や改修が完了した後、施工の品質を確認するための検収作業は非常に重要です。以下に、施工後の検収で確認すべき20項目を詳しく解説します。
- 仕上がりのムラや傷の有無
屋根材や塗装の仕上がりにムラがないか、また施工中に発生した傷がないかを確認します。 - ビス頭のシール座屈の有無
ビス頭に施されたシールがしっかりと密着しており、座屈(変形)がないことを確認します。 - 切粉や鉄粉の残留ゼロ
施工中に発生した切粉や鉄粉が残っていないかを確認します。これらが残ると錆の原因となります。 - 重ね代が仕様値以上であること
屋根材の重ね代が製品仕様に準拠しているかを確認します。短縮されている場合、漏水のリスクが高まります。 - 端部シールの連続性
屋根材の端部に施されたシールが途切れることなく連続しているかを確認します。 - 棟の通気確保
棟部分に設置された換気棟が適切に機能しており、通気が確保されているかを確認します。 - 谷部の清掃と水勾配の良好性
谷部分に汚れや落葉が溜まっていないか、また水がスムーズに流れる勾配が確保されているかを確認します。 - 立上り部分の二次防水施工
外壁との取り合い部分に二次防水(捨てシール)が適切に施工されているかを確認します。 - ケラバ押さえの隙間の有無
ケラバ部分の押さえに隙間がないかを確認します。隙間があると風雨の侵入を許す可能性があります。 - 雨樋の勾配と水流の確認
雨樋が適切な勾配で設置されており、水がスムーズに流れるかを確認します。 - 屋根裏の含水や染みの確認
屋根裏に湿気や水染みがないかを確認します。これらは漏水の兆候となります。 - シーリングの気泡や隙間の有無
シーリング材に気泡や隙間がないかを確認します。これらがあると防水性能が低下します。 - 塗装膜厚の確認(目視・塗回数)
塗装の膜厚が均一であるか、また指定された塗回数が守られているかを確認します。 - 端末の捨てシールの確認
屋根材の端末部分に捨てシールが適切に施工されているかを確認します。 - 雨天時の漏れ再確認
雨天時に実際に漏水が発生していないかを確認します。 - 隣地の清掃と釘の残留ゼロ
隣地に施工中のゴミや釘が残っていないかを確認します。施工後の清掃はマナーとしても重要です。 - 足場解体後の傷の再点検
足場を解体した後、屋根材や外壁に傷がないかを再度確認します。 - 保証書の受領
施工業者から保証書を受け取り、保証内容を確認します。 - 写真台帳の受領
施工前後の状態を記録した写真台帳を受け取り、内容を確認します。 - 取扱い説明とメンテナンス方法の説明受領
屋根材の取扱い方法やメンテナンス計画について、業者から説明を受けます。
12. メンテナンス計画(寿命を倍にする運用)
金属屋根の寿命を延ばすためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。以下に、具体的なメンテナンス計画を解説します。
毎年のメンテナンス
- 落葉清掃
谷や雨樋に溜まった落葉を清掃し、排水がスムーズに行われるようにします。 - ビスや役物の目視点検
ビスの緩みや役物の劣化がないかを確認します。
3〜5年ごとのメンテナンス
- シーリングの点検と部分更新
コーキング材の劣化が見られる場合、部分的に更新します。
8〜12年ごとのメンテナンス
- 再塗装
屋根材の素地や立地条件に応じて、再塗装を行います。これにより、屋根材の耐久性を維持します。
台風や豪雪後の臨時点検
- 写真記録と軽微な補修
台風や豪雪の後は、屋根の状態を写真で記録し、軽微な損傷があれば即座に補修します。
13. よくある質問(FAQ)
Q. サビ止めだけで何年持ちますか?
A. 初期段階のサビであれば、5〜7年程度の延命が可能です。ただし、穴や膨れがある場合は短命に終わることがあります。
Q. 雨音がうるさい。改善策は?
A. 通気胴縁を設置し、断熱一体型の屋根材や屋根裏吸音材を追加することで、雨音の体感が改善されます。
Q. カバー工法の上に再カバーできますか?
A. 不可です。次回は葺き替えが原則となります。
Q. 冬でも工事できますか?
A. 可能です。ただし、塗装作業には温度や湿度の制限があります。張り替えやカバー工法は問題なく施工可能ですが、養生を徹底する必要があります。
14. 火災保険・補助金の活用
金属屋根の修理において、火災保険や補助金を活用することで費用負担を軽減することができます。
- 対象となる災害
風災、雪災、雹災が原因の場合、保険の対象となる可能性があります。ただし、経年劣化は対象外です。 - 申請のポイント
発生日の蓋然性、破損形態、写真台帳の3点が申請の肝となります。 - 自治体の補助金
耐風や断熱改修に対する補助金が自治体から支給される場合があります。事前申請が必須です。
15. 失敗しない業者選定の基準(RFP化できる要件)
信頼できる業者を選ぶためには、以下の基準を満たしているかを確認しましょう。
- 診断から写真台帳の作成、事故復旧と劣化改修の分離見積が可能であること
- 建設業許可を取得しており、固定電話や実在住所が明示されていること
- 設計値(重ね代やピッチ)を仕様書で提示できること
- 最長10年の保証書と施工写真台帳を納品することを約束していること
- 訪問販売や即決契約、「一式見積」を多用しないこと
16. まとめ|“原因→設計→検収”で、再発しない金属屋根へ
金属屋根の修理は、DIYで対応できる範囲を超える場合、プロに依頼することが最善です。プロは原因の特定から設計、施工、検収までを一貫して行い、再発ゼロを目指した修理を提供します。迷った場合は、まず点検(ドローンや散水調査)を依頼し、判断材料を整えることで、費用や工法の選択に迷いがなくなります。