はじめに|「急がば回れ」が台風後の鉄則
台風が通過した後、屋根の一部が剥がれたり、天井から雨漏りが発生したりすると、多くの方が「すぐに自分で何とかしなければ」と焦って行動してしまいます。しかし、応急処置の方法を誤ると、被害がさらに拡大したり、火災保険の補償対象外になってしまうケースも少なくありません。
台風直後の行動で最も重要なのは、「スピード」ではなく「安全と正確さ」です。この記事では、屋根修理の専門家の視点から、台風被害後に絶対やってはいけない応急処置3選と、正しい対応手順を詳しく解説します。
❌ やってはいけない応急処置①|「屋根に登ってブルーシートを自分で掛ける」
台風被害後、最も多い事故例が「屋根に登ってブルーシートを掛けようとする」行為です。一見すると、雨漏りを防ぐための合理的な行動に思えますが、実際には非常に危険であり、命に関わるリスクを伴います。
屋根に登ることの危険性
台風直後の屋根は以下のような状態になっていることが多く、非常に危険です。
- 表面が濡れて滑りやすい
雨や湿気で屋根材が滑りやすくなり、足を滑らせて転落するリスクがあります。 - 板金や瓦の端が鋭利に変形している
強風で飛ばされた瓦や板金の破片が鋭利になっており、怪我をする可能性があります。 - 破損箇所が不安定
屋根の一部が崩れかけている場合、踏み抜きや崩落の危険があります。
ブルーシートの誤った固定が招く二次被害
さらに、ブルーシートを誤って固定すると、以下のような二次被害を引き起こす可能性があります。
- 雨水が逆流して屋根裏に溜まる
シートの固定が不十分だと、雨水がシートの隙間から侵入し、屋根裏に水が溜まる「水溜まり状態」を作り出します。 - 室内被害の悪化
雨水が屋根裏から室内に流れ込み、天井や壁の損傷が広がる原因になります。
🧭 正しい対応
- 危険箇所には近づかない
屋根には登らず、地上から被害状況を確認し、スマホなどで写真を撮影します。 - 室内での応急処置
雨が止むまで、室内でバケツや雑巾を使って雨水を受け止め、被害を最小限に抑えます。 - 専門業者への依頼
屋根診断士や専門業者に連絡し、ブルーシート養生を依頼します。専門業者は安全な方法でシートを設置し、二次被害を防ぎます。
❌ やってはいけない応急処置②|「破損箇所をテープ・コーキングで塞ぐ」
台風被害後、破損箇所をテープやコーキング材で塞ごうとする方も多いですが、これも避けるべき行為です。一見すると「水を止めている」ように見えますが、実際には逆効果になることがほとんどです。
テープ・コーキングの誤使用が招く問題
- 水の逃げ道を塞ぐ
テープやコーキングで破損箇所を塞ぐと、雨水が内部に閉じ込められ、野地板やルーフィングが腐食する原因になります。 - 内部結露によるカビ発生
水分が逃げ場を失い、屋根裏や壁内部で結露が発生し、カビや腐敗が進行します。 - 再施工コストの増大
特にシリコン系コーキング材を誤って使用すると、その後の本施工で塗装や接着が効かなくなり、再施工のコストが増大します。
🧭 正しい対応
- テープ・コーキングは室内側の一時処理にとどめる
屋外の破損箇所には触れず、室内での応急処置に専念します。 - 被害箇所の記録を残す
被害箇所を写真に撮影し、火災保険の申請用に保存します。 - 専門業者による調査を依頼
発光液や散水検査を用いて、被害箇所を正確に特定してから修理を行います。
❌ やってはいけない応急処置③|「修理業者を即決して契約する」
台風後は「すぐに修理できます」「保険対応で無料です」といった訪問営業や緊急業者が増えます。しかし、焦って契約すると、以下のようなトラブルに巻き込まれる可能性があります。
典型的なトラブル例
| トラブル内容 | 具体例 |
|---|---|
| 高額請求 | 相場の2〜3倍の料金を請求される/工事後に追加請求される |
| 保険不適合 | 申請書類が不備で保険が下りない |
| 手抜き施工 | 養生のみで再発対応がされない |
| 保証なし | 施工後の再発に一切対応しない |
🧭 正しい対応
- 現地調査・写真報告・見積書の3点セットを確認
信頼できる業者は、現地調査を行い、写真付きの報告書と明細付きの見積書を提出します。 - 業者の実績と保証内容を確認
会社所在地や施工実績、保証期間を必ず確認します。 - 保険対応の確認
保険対応を謳う業者の場合、顧問弁護士や保険専門部署があるかをチェックします。
⚙️ 正しい応急処置と専門依頼の流れ
台風被害後の正しい対応手順を以下にまとめました。
| ステップ | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| ① 安全確保 | 屋外へ出ず、漏電や落下物を確認 | 人身事故防止 |
| ② 被害撮影 | スマホで屋根や室内の被害を撮影 | 保険申請用の証拠保存 |
| ③ 室内応急 | バケツや雑巾で雨水を受け止める | 二次被害防止 |
| ④ 専門依頼 | 屋根診断士や保険対応業者に連絡 | 原因特定と見積作成 |
| ⑤ 保険連絡 | 風災・水災として保険申請 | 修理費用負担の軽減 |
💴 応急処置・修理費用の目安
以下は、台風被害後の応急処置や修理費用の相場です。
| 工事内容 | 相場価格帯 | 備考 |
|---|---|---|
| 緊急ブルーシート養生 | 2〜6万円 | 面積や勾配で変動 |
| 一部板金補修 | 3〜15万円 | 棟板金やケラバ部など |
| 屋根全体補修(風災対応) | 30〜120万円 | 火災保険適用可能 |
| 散水・赤外線調査 | 3〜8万円 | 原因特定時に実施 |
まとめ|“やらない勇気”が家を守る
台風被害後の応急処置で重要なのは、「焦らず、確実なステップを踏む」ことです。以下のNG行為を避け、正しい対応を心がけましょう。
| NG行為 | 理由 |
|---|---|
| 屋根に登る | 転落や再破損の危険 |
| テープ・コーキングで塞ぐ | 水の逃げ道を潰す |
| 修理業者を即決 | 悪質業者や高額請求の温床 |
✅ 正しい行動は「記録・報告・専門依頼」。
焦らず、確実な対応を行うことで、被害を最小限に抑え、家を守ることができます。

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